フォーラムの趣旨

電波利用や空港スロット割り当て、電力市場、排出権取引など、オークションは、現実の政策として議論されるようになり、電子商取引やスポンサードサーチなど、広くビジネスにも活用されるようになった。また、学校選択や研修医などのマッチングについても、さまざまな政策が検討されるようになった。

「マーケットデザイン」は、このようなオークションやマッチングの制度設計を専門的に分析するためのゲーム理論の応用分野である。マーケットデザインの研究は、近年飛躍的に進み、経済学全体においてとりわけ重要な位置を占めるようになった。そして、オークションやマッチングが優れた効果を発揮するためには、マーケットデザインの専門的知識の活用が必要不可欠になっている。しかしながら、現状の日本社会では、マーケットデザインの重要性が十分には認知されておらず、その専門的知識が、現実の政策論議やビジネスに十分に生かされているとはいいがたい。

私どもは、日本の研究者がイニシャティブをもっと発揮して、マーケットデザインの有用性についての理解を広める努力をすべきと考える。オークション・マーケットデザインフォーラム(AMF)は、マーケットデザインに関連する研究者が集うことにより、

(1) 理論の発展を踏まえた政策提言

および

(2) 研究者間、実務者・研究者間、政策担当者・研究者間の情報ネットワークの構築

を推進して、日本社会のこのような現状を打開することを目的とする。マーケットデザインの研究者は、理論を実践に活用するにはどうしたらいいかについて、より一層具体的な解決方法を模索していかなければならない。そのためには、理論と実践のフィードバックの構築が必要不可欠である。このような学術的背景と、経済学が社会に貢献する機会を開発していきたいという強い思いから、AMFを設立するに至った。

2012年1月5日

松島斉(東京大学経済学研究科教授)

柳川範之(東京大学経済学研究科教授)

 

電波オークション成功の条件」松島斉、日本経済新聞朝刊「経済教室」2011年12月2日

電波オークションまったなし:日本を変えるマーケットデザイン」松島斉、日本評論社「経済セミナー」2012年1月27日